このブログの趣旨
高校で学ぶ歴史科目の各単元について、歴史的思考力を育成できるような学習方法を解説するものです。
それは同時に、大学入試対策にもなり、さらに歴史に興味を持つすべての人にとり比較的容易に理解に至るという手法です。
ここで取り上げる歴史総合の困難性
この科目は最近新設されたもので、日本史と世界史を融合したもののうち近現代史を歴史的思考力の育成をメインに学ぶ内容になっています。
そのため学習方法に悩む人が非常に多いというのが実情です。
高校の先生方の多くが指導方法に悩み、その研究発表授業の例を見るに主題学習を重視しそのための教科書や教材を用意するものが多いです。
また歴史総合の教科書の多くが前の時代の内容無しに(簡単には触れられていますが)いきなり「16世紀の世界は」などとスタートするので、高校の生徒さんたち(歴史総合科目の相当学年は高1)にとっては戸惑うだけでなく学習方法も分からないという状況になっています。
歴史的思考力は実は日常の授業や学習で育成可能
ブログ主の私は、高校で歴史担当の教師をしていた経歴を持っています。
勤務していたその頃既に歴史的思考力の重要性が叫ばれていましたが、私自身もその指導方法が分からず知識偏重の指導に陥っていました。
その後大いに反省し研究を重ねた結果、歴史的思考力は月一回程度の主題学習ではなく、日常の授業や学習の中で十分に育成可能だと確信しました。
そのための指導方法や学習方法のノウハウもほぼ確立しています。
ただ私は現在教職に就いていません。
そこでこのような全国津々浦々の悩める先生方や生徒さんの指導や学習の一助になればと、このようなブログを立ち上げた次第です。
今回はその第1回になります。
参考資料・引用元
山川出版社2021年検定済2023年3月印刷発行の(つまり最新版)、『歴史総合 近代から現代へ』です。
https://new-textbook.yamakawa.co.jp/history/
ブログを読む際はこの教科書がお手元にあれば該当ページを開いてください。
参照するのは、他の教科書や参考書でも良いです。
また教科書類が身近になくてもこのブログ記事だけで十分理解可能だと思います。
教科書のP24~25が今回および次回の内容です。
その前に予習のすすめ
できればここでブログを読むのをいったん止めて、予習をしてください。
当該教科書をお持ちの方に具体的な予習の方法を伝授します。
また他の書籍やwikipediaの項目を読んでもいいと思います。
学習の第一歩は冒頭文
この最初の単元(タイトル名のある最小の項目)のタイトルと冒頭文を読みます。
把握することは、前の時代とこの時代の特定です。
しかし残念ながらいきなり16世紀から始まるので、前の時代の記述がありません。
教科書の前のほうに簡単な記述がありますが、大ざっぱすぎて参考になりません。
P24の冒頭文に
"16世紀の西アジア・南アジアでは…3つのイスラーム帝国が並立"
とあるので、それを裏返し「前の15世紀まではこのような大国は無かった」というふうに無理に読めることは読めます。
これはこれで、かなり重要な前提知識にはなります。
具体的には、15世紀まではこのような大国たちが無かったので、西のヨーロッパ人は東の中国やインドに容易に(通行料を払わずに)行くことができたということです。
16世紀になると東に行くのに通行料を払う必要が生じたと。
通行料があるかないかは、貿易商人(安く仕入れて高く売りたい)にとっては死活問題といえますね。
しかしこのような理解は予備知識がある人には容易ですが、高1の生徒さんには予習段階では不可能といえます。
歴史は前後関係が主要テーマ(歴は並べるという意味。史は字という意味で、歴史とは字が順序良く並んでいるという意味です)なのに、これはまずいですね。
歴史総合という科目を近現代史かつ高1履修にしたことの最大の短所です。
学習の第二歩は内容の把握
[固有名詞や歴史用語は軽く]
冒頭文を読んだら、次に内容を読みます。
初めて見る固有名詞や歴史用語が多数出てきます。
歴史総合や世界史を将来大学入試科目に選んでいる人は、一問一答問題集や用語集などでこれらをチェック(チラ見)してください。
それ以外の人は、固有名詞や歴史用語は教科書チラ見だけで十分です。
用語のチラ見を終えたら、中身を読むのですが…。
初見では内容(この単元のメインテーマ)の把握は難しいと思います。
[段落ごとの内容をざっくりと把握]
大ざっぱな内容は、段落ごとに見れば分かります。
この単元内には5つの段落があり、第一段落は中身の大ざっぱな内容、第二段落はオスマン帝国、第三段落はサファビー朝、第四・第五段落はムガル帝国です。
勘のいい人はここで一つの疑問に気づくことでしょう。
この3か国をなぜ1つの単元にまとめているのか?
この3か国には何か共通点があるのではないか?
そこで第一段落を見れば、その共通点の大ざっぱな内容が記されています。
この教科書はかなり親切で丁寧です。
さすが『詳説世界史・日本史』の流れをくんでいるだけあります。
[単元のメインテーマを容易に発見可能な方法]
しかしメインテーマの把握はそれだけでは足りません。
雑多な内容の中からどうやって見出すか。
そこでブログ主の私が、メインテーマ把握のとっておきの方法を伝授しましょう。
なお別に秘伝ではありません。
長文読解が得意な人が普通にやっている方法です。
文章中に繰り返し出てくる言葉をチェックする
この単純な作業だけで、容易に要旨を把握できます。
なぜ把握できると思いますか?
人は、論理的に話したり文章を書いたりするときは、必ず大事なことを2度以上繰り返す傾向があるからです。
よく言うでしょう?
「大事なことなので2回言いました」と。
読み手が、書き手のそういう心理状態を利用して文章を読み解くのです。
教科書が汚れるのは嫌だと思う人はコピーするか、山川出版社のインターネット販売でもう一冊購入するかしてください。
数百円なので購入したほうがお得です。
[抽出した言葉群からさらにエッセンスを抽出]
チェックができたら、その言葉たちの中から抽象的な言葉をさらに抜き出します。
固有名詞や歴史用語が気になりますが、スルーしてください。
そのさらに選りすぐって抜き出した言葉たちが、この単元のメインテーマです。
抽象的な言葉たちを抜き出す理由は、普遍化が可能な点にあります。
固有名詞や歴史用語がその単元の中や似た分野の中だけで意味を成すのに対し、抽象的な言葉はいろいろな時代、いろいろな場所に共通の意味を持つからです。
特に、現代の自分たち学習者の思いに通じるものがあります。
(もう一歩先の学習として、さらにここから一定の特徴のある言葉たちを抜き出す段階があります。
この言葉たちこそが、歴史的思考力を育成する可能性があるキーワードですが)
[作文をする]
次に、抜き出した言葉たちを使って作文をします。
教科書を見ながらやってもいいし、教科書を見ないで持てる知識を総動員してやってもいいです。
言葉同士の関係を把握するのが目的です。
ここまでが、予習段階です。
なお受験のため授業で習っていない箇所を学ぶときは、この先も自力でやる必要があります。
学習の最終段階
歴史的思考力の育成
このブログでは、この単元のメインテーマとなる言葉たちの中から、さらにキーワードを抜き出しそれについて歴史的思考力の育成を主眼に解説したいと思います。
私がこの教科書のP24~25の繰り返し出てくる言葉たちの中から、ある特徴を手がかりにさらに抜き出したキーワードは
"帝国 繁栄 内 外 教徒 自 首都 輸出 綿織物"
になります。
いったいどういう特徴のある言葉たちでしょうか?
考えてみてください。
この続きは、ブログの次回に書きます。
一応ヒントを示しておくと
「言葉は、人と同じく独りでは生きていけない」。
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(探究レベルで網羅しているので、歴史総合のほか世界史探究の理解にも役立ちます。
定期テスト対策に直結するほか、歴史総合の討論や問答授業の予備知識も得られます)
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