注意
ブログ主の私がここで書いている内容は、あくまで私個人の独断と偏見によるものです。そのことをご了承ください。
参考資料・引用元
山川出版社発行の教科書『歴史総合 近代から現代へ』最新版のP24~25「イスラーム3帝国」を参照しながら、そのメインテーマの容易な把握方法を解説していきましょう。
https://new-textbook.yamakawa.co.jp/history/
繰り返し出てくる言葉のチェック作業の留意点
前回紹介したこの作業は、多くは2字で構成されている熟語単位ではなく、1字単位で行うようにしてください。
かなり細かい作業になります。1単元の内容が多いとなかなか大変な作業になってしまいます。
また、この作業の段階では固有名詞や歴史用語も含めて、繰り返し出てくる言葉をチェックしてください。
そうやってチェックした言葉たちをつなげて作文をしてください。
歴史総合の授業の受け方
なおこの作業を予習段階ではなく、授業中に行うことも考えられます。
その際は教科書の文章を要約したプリントを教師が作成し、授業で生徒さんに提供するのがよいでしょう。作業時間を短縮するためです。
授業段階では、討論形式にしろ、問い形式にしろ、座学形式にしろ、どの形の授業でも予習した結果が理解に深みを増すと思います。
座学形式の授業では、担当の先生方が内容の要旨を用いた作文の結果を板書ないし口述してください。
予習を終えた生徒さんたちは、自分が把握したものと先生の説明が合致しているかどうかを確認します。
この場合、担当教師がここに挙げている方法を意識しなくても、教えるときは自然にここで挙げた方法で把握できるメインテーマを強調して板書するか口述します。
もしメインテーマを板書しない口述しない(固有名詞と歴史用語だけを教える)という教師がいたら、その教師は残念ながら歴史を教えるプロではありません。
そのときは諦めて、参考書や塾を使い自力で独学してください。
討論形式や問い形式の授業は歴史的思考力を育成することを目指しますが、座学により必要な知識をインプットした後に行うのが望ましいと思います。
基礎知識がないと、討論や問答をしても深みのない薄っぺらな内容になるからです。
試験対策
大学受験を目指している人は、この作文に添える形で固有名詞や歴史用語を位置づける学習を行います。
担当する先生方は、そのように指導します。
繰り返しますが、固有名詞や歴史用語はメインテーマに添えるという位置づけです。
大事なことなので2度言いました(笑)。
定期テストの対策勉強においても同様の学習をしますが、固有名詞や歴史用語をメインに位置付けて暗記してください。
大学入試では固有名詞や歴史用語を直接問う問題は少ないのですが、定期テストではそういう問題が出されることが多いからです。
前回からの続き
"帝国 繁栄 内 外 教徒 自 首都 輸出 綿織物"
教科書から抽出に抽出を重ねて取り出したのが、この言葉たちです。
用語を問う問題対策の基本学習は、抽出の第一段階(固有名詞や歴史用語を含めての繰り返し出てくる言葉)で作文すれば良いです。
記述式問題対策のメインテーマ学習は、抽出の第二段階(固有名詞や歴史用語を除外したもの)で作文してください。
そして抽出の第三段階により抜き出したのが、上記赤字の教科書からの引用言葉群です。
これらを使って作文してもよいのですが、この言葉たちはいわゆる歴史的思考力を育成する目的で抽出したものなので作文することにあまり意味はありません。
あえて作文すると、次のようになります。
「16世紀のアジアにはイスラーム3帝国が繫栄した。
この国々は国内のイスラーム教徒以外の民族・宗教教徒に自治を認めるなど寛容で、海外との貿易も綿織物の輸出など盛んで首都は国際都市化していた」
作文するには、ちょっと無理がありますね。
紫色の字は、教科書内で繰り返し出てくる言葉です。
こういう言葉を入れないと作文は難しいです。
歴史的思考力の育成
"帝国 繁栄 内 外 教徒 自 首都 輸出 綿織物"
この言葉たちを選んだ基準は、その言葉と対立する語や比較できる語が連想可能なものというものです。
例えば、”帝国”
(参照教科書P24の10行目に初出。繰り返し19回も出てくる。
ちなみに、本文だけでなく、補足書きや参考地図や参考写真の説明文もチェック)
世界史上そのように称する国が古今東西非常に多くあります。
しかしそれらは皆異なる意味(異民族支配という意味が一般的だが)で称していることが多く、その比較が可能です。
イスラーム帝国は、唯一神を信奉する神の国の最高国家というものです。
だから普通は、ムハンマドの後継であるウマイヤ朝やアッバース朝を指します。
ここに出てくる3帝国も当時のイスラームの最高国家を自称していますが、歴史学的にはイスラーム3王朝と呼びます。
ただ3帝国のうちオスマン帝国とムガル帝国は諸国王の上に君臨する意識を持ち、サファビー朝はシーア派としてスンナ派のオスマン帝国に対抗心を燃やしていることから「(諸民族を支配する)帝国」といってよいでしょう。
古代ローマ帝国は、キリスト教を信奉・保護する神の国の最高国家がヨーロッパ諸国の上に君臨するという理念です。
この理念は、その後長くヨーロッパの諸国の君主たちに意識され、神聖ローマ帝国やビザンツ帝国、ロシア帝国、ムソリーニらにつながります。
また大日本帝国は、東アジアの諸民族を支配することをめざした国号です。
「帝国」というと皇帝が君臨する国だと連想しますが、王国との違いは何か?という連想もできますね。
ちなみに現在の日本は「日本国」と称していますが、実態は「日本王国」または「日本皇国」でしょう?
なぜ「王」や「皇」の字を国号に入れていないと思いますか?
考えられる理由は、民主主義を強調したいとか、そういうことはオブラートに包んでぼかすべきだという日本国民の伝統意識とかです。
このように国名・国号は、その国の人たちや君主の意識や理念を表していることが多いのです。
以上だけでも、かなりの分量の歴史的思考(歴史に思いを馳せる、現在とのつながり)が可能です。
このような思考の可能性のある言葉を文章中から発見し、追究していくという手法が、私の提案する歴史学習方法です。
追究の手段はいろいろで、教科書や参考書を利用し自分で考えてもよいし、他人と討論してもよいし、教師と生徒で問答してもよいのです。
ただ高1段階では、自力で上記のような諸地域・諸時代にわたる思いの馳せ方は不可能といえます。
高3履修だったとしても、知識量が少なく難しいのではないでしょうか。
教育現場の先生方もそのことをよく分かっているので、実際に各高校で行われている歴史的思考力授業の内容もかなり大ざっぱで抽象的なものになって(その結果として定期テスト対策に多くの生徒たちが悩む)いるようです。
こういう授業を生かすには、ここで提案した方法で予習をすることが必須です。
他の言葉の、歴史的思考の追究
"帝国 繁栄 内 外 教徒 自 首都 輸出 綿織物"
*繫栄
と続けたいところですが、長くなってしまいましたので次回に持ち越すことにします。
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