(アフィリエイト広告を掲載しています)
今回の参考資料・引用元は
山川出版社発行の教科書『世界史探究 詳説世界史』2022年検定済23年発行
P119(14行目)~P121(4行目)「商業の発展」
https://new-textbook.yamakawa.co.jp/w-history
冒頭段落で時代を特定する
封建社会が安定して農業生産が増大した結果・・・また、ムスリム商人やノルマン人の商業活動によって・・・さらに十字軍の影響で・・・11~12世紀には、このように・・・発展した。
冒頭の段落の中に、時代を特定する内容が入っています。
キーワードは、「した結果」「によって」「の影響で」。
この語の前に、前の時代あるいは同時期の出来事が書かれています。
前2者は前の時代の出来事の結果であり、後1者は同時期です。
この単元の具体的な年代も書かれていて、時代の特定は十分に行えます。
歴史的思考の重要な内容に、因果関係の理解があります。冒頭文ないし冒頭段落を丁寧に把握することで、因果関係が明確になります。
本文中に繰り返し出てくる言葉により要旨を把握する⇒歴史的思考を広げる
例によって、固有名詞や歴史用語はいったん除外して考えます。
なお歴史用語(漢字熟語のことも多い)でも分解可能なものは、分解して考えます。
第1段落(冒頭文)
生産 活発 都市 商業 発達
(ムスリム商人)
交通 毛織物 発展 遠隔地 貿易
「(農産物の)生産が活発になり、都市と商業が発達し始めた。交通が整い、毛織物業の発展を背景に遠隔地との貿易が盛んになった」
農産物という補足は、商業が発達という部分から容易に連想できます。
連想できなかったという人は、もう一度歴史的思考の基礎を学びなおしてください。
歴史的思考は、その言葉(ここでは都市・商業)の対照語(農村・農業)を連想することにより容易に可能です。
「毛織物」という新しい言葉が出てきました。
これは、農業と商業をつなぐもの(農産物に付加価値を与えるもの)、つまり工業生産物です。(当時は手工業)
この工業の発展が、産業(農業工業商業)を大いに発展させていきます。
<歴史的思考が広がる言葉を抽出>
都市 商業 ムスリム商人 毛織物 遠隔地 貿易
*「都市」
の対照語は、農村。ここでは、封建領主が支配する閉鎖的な農村です。
都市が発展し始めたとはいえ、社会の大多数は封建農村でした。
つまり都市の発展は一部のことに過ぎません。都市や商業を過大評価しないようにしてください。このことは、後のルネサンスの限界問題に関わってきます。
*「商業」
の対照語は、農業。
農業生産が発展しないと、商業も発展しません。売るものが無いのですから。
だから農業が未発達な時代は、宝飾品や人身売買が主流でした。
また各農村で自給自足が普通になると、貨幣が不要になり消えます。
商業というと現代では物と貨幣(電子マネーも含めて)のやり取りですが、物々交換で十分に取引可能です。
ただ異なる物同士の価値比較は難しいので、貨幣が使われるのです。
*「ムスリム商人」
つまりイスラーム教徒の商人です。
イスラーム教の歴史的な対照語は、キリスト教です。
ムスリム商人の活躍情報は、キリスト教徒の商人たちを大いに悔しがらせたでしょう。商売がたきに加えて、宗教的な対抗心が燃え上がります。
イタリアなどヨーロッパ各地の商人が、活路を大西洋、そしてアメリカ大陸に求めていく素地がここにあります。
*「毛織物」
は、繊維工業生産物の一つです。
原料は、動物の毛。この中世ヨーロッパでは、羊の毛(ウール)になります。
羊は、ヨーロッパの封建農村で飼育されていました。
織物には、他に、絹織物や綿織物があります。
絹(シルク)は、畑で栽培した桑の葉を蚕が食べ口から吐いた糸が原料です。
綿(コットン)は、畑で栽培した綿花の実の中の繊維が原料です。
絹は、主に中国や日本など東アジアが特産です。
綿は、世界各地で生産されます。インドが特に優れ、この後の時代に生産が大発展します。
*「遠隔地」
近隣と貿易すると、運搬費用や買い付け費用が安上がりです。
ただお互い似たような品物ばかりで、大した儲けになりません。
遠隔地の品物だと、近隣にはない珍しい品物がたくさんあります。
仕入れに費用はかかりますが、それを補って余りあるほどに高価で売れます。
とくに香辛料が、ヨーロッパ人を熱狂させます。
*「貿易」
これは現代では考えつかない連想ですが、当時は、貿易といえば海賊と連想するのが普通でした。
海賊は、実は普通に商業や貿易を行っていました。
海賊だからといって、年がら年じゅう人をころしまくったり奪いまくっていたわけではありません。
殺しや奪いは一時的には利益になりますが、継続的な利益にはつながりません。生かして取引することで、継続的な利益が手に入ります。取引がうまくいかないときに、海賊をすれば済みます。
これは、東アジアの倭寇も同様です。
本来は商人ですが、海賊もやるという状態でした。
第2段落(地中海商業圏)
地中海 商業圏
ヴェネツィア ジェノヴァ ピサ イタリア 東方 アジア 香辛料 奢侈品 もたらされる
ミラノ フィレンツェ 内陸
「地中海商業圏が形成された。東方の香辛料など奢侈品の取引がメインである。海港都市だけでなく、内陸都市も栄えた」
<歴史的思考が広がる言葉を抽出>
*「地中海」
は、ヨーロッパの南に広がる広大な海です。
南にアフリカ、東にアジアがあり、古代ギリシア・ローマ時代以来の海上貿易路です。
沿岸地域は、雨量が少なく乾燥ぎみですが、気候が温暖で住むにはとても快適です。
この時代は、西アジアから西欧のシチリア(イタリア半島の南にある島)やイベリア半島(後のスペイン・ポルトガルの場所)にイスラーム勢力が進出し、東のビザンツ帝国と勢力を二分していました。
ヨーロッパの商人は、この2勢力と取引することで交易をしていました。
この2都市は、イタリアの港町の2大ライバルです。
イタリア半島のながぐつ形の東西の根元にあるのがこの2都市で、西がジェノヴァ、東がヴェネツィアです。
ジェノヴァの港は南西方向に開かれ、ヴェネツィアの港は南東方向に開かれています。
ジェノヴァ出身のコロンブスが西に向かったのは、地球球体説を信じたほかに、こういう方角志向もあったようです。
ヴェネツィアは東方貿易の一大都市で、ジェノヴァはこれに対抗する気持ちが大きかったのです。
*「東方」
の反対語は、西方です。
ヨーロッパにとって東方とは、アジアのことです。
それでは、西は?
当時の地理知識では、ヨーロッパの西の海の果ては世界の終わりで、その先は大きな崖になっていて海水が奈落の底に落ちているという考えでした。
実は古代のギリシア人は地球が球体だと知っていましたが、その知識は埋もれてしまっていました。
また北欧のアイスランド人は西に大きな陸(ヴィンランドと呼ばれていた)があることを知っていて、移住する人もいました。
この西方の知識が再び発掘された後、ヨーロッパ人は西に向かうことになります。
*「香辛料」
人は生きるために食べますが、その食に楽しみを見出すのは普通のことです。
食の楽しみは、美食です。
美味しさのもとは、辛みです。辛いものは体温を上げるので、健康にも良いのです。
中世ヨーロッパにもたらされた香辛料の代表が、コショウです。
美味しさを一度知ってしまったヨーロッパ人は、熱狂的にコショウを求めます。どんなに高価でも手に入れようとしたので、商人は巨万の富を得ることになりました。
*「奢侈品」
いわゆるぜいたく品です。
商品には、比較的安価な生活必需品のほか、比較的高価な趣味品やぜいたく品があります。
商人がもうける利益のメインは、後者に由来します。後者の売れ行きは景気の指標として使われます。
何が奢侈品かというのは時代によって違っていて、中世当時は奢侈品だった香辛料も、現代では栽培・加工技術が発達し日常品となっています。
*「内陸」
地中海貿易というと、普通は港町の繁栄を考えますね。
しかし貿易・商業といえば、農業・農村を連想しようといっています。
農村は各地にあります。港町に至る道は近くありません。
すると、一地域の農産物をいったんどこかに集めて、そこから港町に送るということが発想できます。
この物資を集める内陸の場所(道が交わる交通の要地)に、行き交う人目当てに店ができて、都市ができます。
ここは、港から入ってきた遠隔地の特産物の集積所にもなります。
第3段落(北ヨーロッパ商業圏)
北海 バルト海 北ヨーロッパ
リューベック ハンブルク ブレーメン ドイツ ガン ブリュージュ フランドル地方
ロンドン
2大 シャンパーニュ地方
ニュルンベルク アウクスブルク
「ヨーロッパの北の海沿いにも、商業圏ができた。地中海・北ヨーロッパの2大商業圏をつなぐ地点にも、都市ができた」
ヨーロッパに近い海は、南の地中海だけではありません。
西方は未開発ですが、北方に北海やバルト海という海があります。
北に行き過ぎると、冬に港が凍ってしまう地域もあります。
北の海というと冷涼なイメージですが、実は意外と暖かい気候です。温暖気候というより、温和な気候というべきかもしれません。
西の大西洋を北上する大暖流があり、それが北海や北極海近くまで届いています。
このヨーロッパ地域は西風が卓越していて、暖かい海の上を吹くことからヨーロッパに暖かい空気が流入しやすい状況になっています。
北海に面するイギリスのロンドンは北緯51度です。日本の最北端である稚内は北緯45度。
私の調べでは、稚内の平均気温は、夏は16~22度、冬はー8~-3度。ロンドンは、夏は15~23度、冬は4~9度。緯度が高いロンドンのほうが、暖かいのです。
なお札幌と同じ緯度に、南欧の冬でも温暖なヴェネツィアがあります。
<歴史的思考が広がる言葉を抽出>
北 2大
*「北」
北にいる人は、常に南を意識します。
農村に閉じこもっている状態だと意識はしないですが、ひとたび交流が生まれると南北間交流が起こります。
温和といっても冬が寒いのは同じなので、北の人はさらに温暖な南方向を求めます。
また北と南とでは、気温差から農産物も種類が異なってきます。
互いに交易をするのは当然でしょう。
*「2つの」「大きな」
2つの大都市が少し離れている位置にあると、その間の地域にも都市が生まれることが多いです。
東京と大阪の間に、名古屋が生まれたのと同じです。(昔は、東国へ下るときの要地)
港町と農村をつなぐ内陸都市と同様の状況で、交易する商品をいったん集積する場所です。
中世ヨーロッパのシャンパーニュに巨大な市が立ったというのも、この2大商業圏と東方の特産品がここにいったん集積した結果です。
これは地理や歴史と話が離れますが、2大勢力があると、必ず第3勢力が現れます。
中国の三国時代は、北の魏、南の呉に対し、蜀が現れました。
第二次世界大戦後は、アメリカ資本主義陣営とソ連社会主義陣営にプラス、アジア・アフリカの第3勢力が現れました。
3というのは不安定なようで、1対1の対立を緩和するという役割もあります。(勝ち負けで決まる所を、逆に複雑化してしまう面もありますが)
広告
ジグソーパズル BEV-M81-570 黄昏のベネツィアンカフェ(トーマス・キンケード) 1000ピース ビバリー パズル Puzzle ギフト 誕生日 プレゼント 誕生日プレゼント【あす楽】