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今回の参考資料・引用元は
山川出版社発行の教科書『世界史探究 詳説世界史』2022年検定済23年発行
P121(6行目~ラスト)「中世都市の成立」
https://new-textbook.yamakawa.co.jp/w-history
冒頭文
中世都市は、司教座都市などが核になってできたもので、はじめ封建領主の保護と支配を受けていたが・・・
中世前半の都市の置かれた状況の説明があるので、その後の中世後期の話がこの単元です。「できた・・・、はじめ・・・ていた」という言葉で読み解きます。
もうここで、内容の推測が可能です。
「領主の保護と支配を受けていたが」、つまりその保護と支配が無くなったか、薄らいだのではという予想ができます。
こういう言葉の読解を丁寧にしておくと、定期テストや大学入試の時の問題読解力につながります。
本文の要旨を把握
繰り返し出てくる言葉をチェックすると
第1段落(はじめに)
「中世都市は、しだいに領主の支配からの自由や自治をめざし、自治権を獲得する都市も出現した」
都市といえば商人の商業活動なのに、いきなり政治的な話になっています。
これは、どういうことでしょうか?
<思考が広がる言葉の抽出>
中世 都市 自由 自治 権(利) 獲得
*「中世」
古代と近代の間ですね。こういう時代区分が一般的になっています。
ただ一概にまったく別の内容とも言い切れません。
例えば、古代社会の指標として奴隷制度がありますが、この中世ヨーロッパでも奴隷は各方面で普通に存在していました。
東ヨーロッパには古代ローマ帝国がそのまま存続していましたし、西ヨーロッパの農奴も人身売買はされませんがその他の面では事実上の奴隷というべきものでした。
政治的には西ヨーロッパは、大きく様変わりしました。
古代はローマ皇帝とその宮廷につかえる貴族だったのが、中世は、ゲルマン人諸王国が成立したものの国王の力が弱く諸侯や騎士などの封建領主や、ローマ=カトリック教会の教皇や大司教・司教が力を持っていました。
中世後期になると、その政治的な内容が変わっていきます。
*「都市」
の対照語は農村、つまり農業です。
つまり都市の特色は、農産物を売る商業活動をする商人です。
商人の目的は、たっぷり売って利益をなるべくたくさん獲得することです。
できれば出た利益を全部自分のものにしたいのですが、領主の保護と支配を受けていると見返りとして何%かは差し出さないといけません。
3%や10%ならいいのですが、30%とか50%とかは酷いです。(ちなみに江戸時代の年貢税率は40%のち50%)
ということで、商人は利益を領主に奪われないようにするため領主からの独立を志向します。
*「自由」「権利」「獲得」
という言葉は、元は誰かからの支配や束縛を受けていて、その境遇から脱出した状態を指します。
つまり自由になるためには、支配からの脱出という行動が必要です。
普通に考えると、この支配からの脱出は非常に難しいことです。支配する側に利益があった場合は当然、阻止してきます。
そのため脱出するには、支配側に対抗するだけのリアルの実力が必要です。
商人の場合は、溜め込んだ利益そのものが大きな力になります。
当時は、軍事は傭兵が一般的でした。財力イコール軍事力でした。
もちろん一都市の一商人単独では、封建領主に対抗できません。
利害が一致する都市内の商人たちが、団結する必要があります。また諸都市が団結する必要もあります。
*「自治」
これは、現代の地方自治を想起すれば理解できます。それは、国家の下で制限付きで自由に政治できるというものです。
完全な自由を獲得できないとき、玉虫色決着(互いに利用し合う持ちつ持たれつ関係のほうが良い場合もある)で領主・都市双方が妥協した結果です。
具体的には、保護の見返りの%を減らすなどです。
神聖ローマ皇帝(ドイツ国王)が特許した帝国自由都市というのは、この自治都市の一種です。
第2段落(内容)
北イタリア 諸(都市)
ドイツ 諸侯 皇帝 地位
ロンバルディア同盟 ハンザ同盟
リューベック 盟主 北ヨーロッパ商業圏 政治
国王
「諸都市の中には諸侯から独立するため、皇帝に直属し地位を認められるものもあった。諸都市の多くは有力都市を盟主として同盟を結び、政治的な存在となった。北ヨーロッパのハンザ同盟が有名である。国王との結びつきを強める都市もあった」
商人たちが、あの手この手で自由や自治を獲得しようと動きます。
国や地域によって、そのやり方に個性が出ます。
ドイツには神聖ローマ皇帝という強力な存在が居ました。北イタリアは諸国の争奪の地となり特定の支配者が居ませんでした。イギリスやフランスは国王の力が次第に強まっていました。
<思考が広がる言葉を抽出>
諸都市 諸侯 皇帝 盟主 国王
*「諸(都市・侯)」
なにげに「諸」という語が付いています。
一都市では、強大な封建領主に対抗できません。しかも領主は一人でなく、多数います。(諸侯の侯は領主のこと)
ただいきなり諸都市が同盟を結んだわけではありません。
初めは都市内の商人たち、都市を超えた商人たちの同盟から始まり、次に都市同士の同盟に発展していきました。
*「皇帝」
ドイツ皇帝は、はじめドイツ北部のザクセン領主(東フランク王国を継承したドイツ国王家)が代々選ばれていました。
のちには、ドイツの南東のオーストリア領主が代々継承します。
いずれにしても現代のドイツ国土全体を支配していませんでした。
しかし神聖ローマ皇帝は、キリスト教を保護する世俗最高君主という位置づけです。
ドイツ国王が務めると、国王の名目上の臣下であるドイツ諸侯は、国王兼皇帝の命令に従うことになります。
諸都市が皇帝に保護を求めその直属となるというのは、ドイツ諸侯と対等の地位に立つことになります。
皇帝直属というのも2種類あって、皇帝に完全に支配される都市と、皇帝から自治権を認められる都市があります。
*「同盟」「盟主」
同盟というと、皆が横並びでというイメージが強いと思います。
しかし実際には、最有力都市が呼びかけて中心となって約束を結ぶパターンが多かったのです。
また近現代の軍事同盟と同様なイメージがあり、独自の軍隊や事務組織を持っていたと誤解されます。
しかし諸都市は「一緒にやろう」とゆるい約束をしただけで、問題が起こるたびにその都度その都度互いに協力して事に当たったというだけです。
*「国王」
中世の諸国王は、伝統的な権威はあったものの、実力が無く諸侯の一人にすぎませんでした。(諸国の事情にもよる。国王が比較的強力な国もあった)
だから、商人が保護をわざわざ求める対象にならなかったのです。
のち国王の力が強まると、商人が国王に接近することになります。
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