rekisitekishikouryoku’s blog

歴史的思考力を一過性でなく継続的に身につける方法

世界史要旨把握14中世ヨーロッパの変容(5)中世都市の自治

アフィリエイト広告を掲載しています)

 

今回の参考資料・引用元は

山川出版社発行の教科書『世界史探究 詳説世界史』2022年検定済23年発行

P122(1行目~20行目)「都市の自治と市民たち」

https://new-textbook.yamakawa.co.jp/w-history

 

冒頭文

自治都市のなかで・・・

この単元の時期は、前の単元と同じです。
ここでは、都市内部の状況の解説です。

 

本文要旨の把握

繰り返し出てくる言葉が、そのまま要旨になります。

第1段落(はじめに)

自治 都市 市民 自由 荘園 農奴

自治都市では、市民が比較的自由になった。そこで荘園の農奴が都市に脱出する事態も出てきた」

その自由は、具体的には、納税の軽減や、移動の自由、領主による人身支配から免れることです。
あくまで都市や商人が皇帝や国王、諸侯と争ったり認められたりして自由や自治を認められた結果です。

都市に住んだからといって、即自由になるわけではありません。
都市に脱出した農奴に対しては、当然領主からの追っ手が差し向けられます。
1年と1日経過すれば自由になるといいますが、実際は最初から領主が農奴の脱出を認めた場合だけでしょう。

*「農奴

この「奴」という言葉には、土地に縛り付けられて移動の自由が無いということと、もう1つ、領主からの人身支配を受けるということです。

純粋な奴隷は売買の対象になるのに対し、農奴は売買の対象にならないという違いがあります。
しかし人身支配を受けることは同じです。
具体的には、領主直営地での労働(タダ働き)や、女子を領主の館勤めに召し出すことなどです。
後者は当然、セクハラ行為が常にありました。ドラキュラ伝説(冷酷な領主が村から女子を多数集めセクハラの限りを尽くしたあげくむざんにもころしてしまう)は、こういう領主の非人道的な態度を表す物語です。
農奴は、自由を常に求めていました。

(ドイツの町並み)

 

第2段落(都市内部の社会)

ギルド 組合
市政 独占 商人
手工業者 同職 ツンフト 争う
組合員 親方
職人
規制
経済

「商人が組合を作り、市政を独占した。これに対し手工業者も同職で組合を作り争い、市政に参加していく。ただ組合員は商人や親方であり、職人など配下の者たちには自由はなかった。市政経済も規制された」

一個人の力では、領主や皇帝・国王に対抗できません。
利害が一致する者たちが集まり団結して事に当たるというのは、自然の流れでしょう。

 

思考が広がる言葉を抽出し、歴史的思考を行う

組合 独占 商人 手工業者 同職 親方 規制

どういう語が思考が広がる言葉かというと、対照語を容易に連想可能な語(東西南北など方角)のほかに、極端な内容を表している語や、複数のものを前提とした語が挙げられます。
「合」「同」は、複数のものが合うとか、同じくするという意味がありますね。
「独」「規制」は、一方的な雰囲気がします。
あとは、主語が不明な動詞(日本文では主語を省略することが多いことから)や、大げさな表現である形容詞がそうです。

なお繰り返し出てくる言葉以外でも、教科書の本文内に出てくるこのような言葉を見つけ出し思考を広げることは可能です。
ただ本文の要旨から外れたところで思考を広げるのは、初期学習段階ではお勧めしません。趣味としての学習や研究としての学習なら、かまわないのですが。
日本各地で行われている歴史的思考の授業や教科書に掲載されている問いの中には、本文の要旨から外れたものが多々見受けられます。脱線授業的な位置づけのいわゆるよもやま話ならいいのですが。

*「商人」と「手工業者」

本文要旨中に現れた2つの語。このように、連想や発想を広げなくても本文中に対比するような形で現れることもあります。

この2者は、対立した存在でしょうか?
経済産業のプロセスを考えてください。

商業は、農産物や鉱産物を販売します。
手工業は、その農産物や鉱産物を加工します。加工すると、物に付加価値が付きます。

ジャガイモのままと、マッシュポテトにした状態と比べると、後者のほうが人件費や光熱費が加わって高価です。
人は普通安価なほうを買うので、この場合は全員前者を買いますか?
後者を買う人も少なくないでしょう。買ってきて調理不要ですぐに食べられるのですから。「調理不要」「すぐに」が、付加価値です。

つまり商人と手工業者は対立する存在ではなく、持ちつ持たれつ関係です。
手工業者組合が闘争を挑み、市政参加を勝ち取るのもそういう関係だからです。

*「組合」

言葉は、複数の人たちが集まって何かをやり合うという意味です。喧嘩をする場合は、取っ組み合いといいます。
団結して何らかの組織を作ったり取り決めをしたりするのが、一般的なものです。
現代でも、商店組合とか、農業協同組合とか、労働組合とか、いろいろあります。

そうやって多数の人が団結するのは、一人ではできないことがあるからです。
労働組合が、いい例です。
一人でいくら交渉したところで、会社は給料を上げたり福利厚生を充実したりしてくれません。
しかし多数の社員が団結して交渉したりストライキをすれば、会社は折れてくれます。
(まあそれでも折れてくれないブラック企業はたくさんありますが)

中世ヨーロッパ都市の場合は、封建領主に対抗するための団結です。
手工業者の場合は、大商人の市政独占に対抗する目的のほうが大きいです。

*「同職」

手工業者の組合は、靴屋・服仕立て屋・鞍製造など職種別になっていました。
これは仕事が同じ種類のほうが、互いに話も合うし専門的な面で共通の認識もあるので団結しやすいからです。

*「親方」

親の反対語は、子です。ここでは親方の下で働いている職人や徒弟を指します。
組合員は、親方だけです。
職人は一人前なのに、組合員として認められません。ギルドが特権階層の組織だと分かるでしょう。

あとこれには、もう一つの意味がこもっています。
親が、子の全てについて支配権を持っているという意味です。
奴隷的な扱いまではいきませんが、それに近いブラック企業的な働きを強います。
親方の命令(仕事以外についても)に従わないとクビとか、日常茶飯事です。
自由を夢見て都市に逃れても、商人や親方にこき使われる現実がありました。

*「独占」「規制」

ギルドの都市内での役割は、ギルドに加盟している商人や親方が商品や製品の価格・販路を決めてしまうことです。
組合に加盟しているところは大手が多いので、大手が価格を決めると中小商人・親方はそれに従わざるを得ません。
これを、市場の独占といいます。

これは、本来の物品価格の決まり方ではありません。
本来は、売れ行きの良いものは高価になり、売れ行きの悪いものは安価になる。
安価になると売れやすくなり、高価になると売れにくくなるというその動きです。
この仕組みを、市場競争による決まる価格といいます。

独占状態になると、売れ行きの悪い物(つまり多くは品質が悪い物)なのに高価で売られ、しかも消費者はそれを強制的に買わされるという状況になります。
この状況が続くと、品質向上の取り組み(技術発展)がされなくなり新しいものが生まれなくなります。
消費が停滞します。景気は安定しますが、大儲けにはなりません。

現代経済も同じで、例えば配達業といえばかつては郵便局の独占状態でした。
その後、規制緩和がなされ、いろいろな宅急便会社が参入しています。
それでもまだ数社にとどまっています。(これを少数の企業が独占=寡占状態といいます)

 

広告


3か月でマスターする 世界史  6月号 (NHKシリーズ) [ 岡本 隆司 ]