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歴史的思考力を一過性でなく継続的に身につける方法

世界史要旨把握17中世ヨーロッパの変容(8)封建社会の衰退

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今回の参考資料・引用元は

山川出版社発行の教科書『世界史探究 詳説世界史』2022年検定済23年発行

P126~P127(8行目)「封建社会の衰退」

https://new-textbook.yamakawa.co.jp/w-history

 

冒頭文

14世紀に入ると、西ヨーロッパの封建社会の仕組みはしだいに衰退に向かった。

「14世紀に入ると」とあるので、この単元の前の時代は13世紀です。
13世紀は、十字軍の終わりです。十字軍は失敗したな、と人々が知る頃です。
十字軍の主力メンバーだったのは、諸侯や騎士です。みな自費で参加していました。
この後どうなるかは、想像がつきますね。

「衰退に向かった」とあるので、前の時代は封建社会の成立・隆盛です。

 

本文要旨の把握⇒歴史的思考

固有名詞が極端に少ない単元です。
歴史が好きな人はだいたい固有名詞が好きなので、こういうところは飛ばしがちです。
しかし固有名詞はその時代だけの存在で、他の時代への影響はまったくありません。
抽象的な言葉は現代も含めどの時代にも通用するので、思考が大いに広がります。

 

第1段落(荘園の変容)

(冒頭文)14世紀 西ヨーロッパ 封建社会 衰退
貨幣 経済 領主 農民 生産物 地代
経済的
黒死病 流行
荘園 向上 体制

「14世紀、西ヨーロッパの封建社会が衰退した。貨幣経済となり、領主・農民の地代問題は生産物から貨幣にシフトした。黒死病の流行もあり農民は向上し、荘園体制は揺らいだ」

ここは抽象語が多いので、作文に苦労します。教科書の内容を参考にして、何とか語と語を繋げられました。

*「西ヨーロッパ」

前の単元で東ヨーロッパの話があり、そのときこの14世紀頃の話も出てきました。
ということで、その頃、西ヨーロッパでは?という話の振り方です。

*「貨幣経済

経済用語は難しいです。
経済とは何かというと、人の物欲をどうやって満たすかという仕組みです。

人にはいろいろな欲望があります。本能的な欲望と、社会的な欲望です。
その社会的な欲望の最たるものが物欲で、人は物の充実(家の中に物がいっぱい)による生活の向上を目指します。
そこで人は互いに、自分が必要なものと不要なものを交換し合うことになります。これが物々交換であり、売買です。
異なる物同士の価値の比較は難しいので、分かりやすい基準として貴金属価格を設定します。物Aは金塊10キログラム、物Bは金粒10個とかですね。この貴金属が貨幣です。
なお貴金属でなく、ぺらぺらの紙でもいいのです。国家が正式に認めて信用がある紙なら、貴金属の代わりになります。これが紙幣です。

物々交換や売買が盛んになればなるほど、経済は発展します。
中世封建社会の時代は、皆農村に閉じこもったため物々交換や売買が衰えました。
封建社会が崩れ人が移動を始めると、物々交換や売買が盛んになります。

*「領主」「農民」「地代」「生産物」「貨幣」

領主と農民の地代問題が中世社会を揺るがすというのは、どういう理由でしょうか?

まず、地代というのは、中世領主が農民を「外敵から守ってやる、土地で農業もやらせてやるからその代わりに差し出せ」と求める対価です。
その対価には、生産物や貨幣のほかに、労働があります。労働は文字通り「身体で払え」です。この労働地代がある頃、農民は事実上の奴隷でした(農奴)。

しかし、中には親切な領主もいて「農地で収穫した物でもいいよ」と言ってくれたりします。
すると農民は身体を領主に支配されることが薄らいで、少し自由になります。

そして十字軍などで人の移動が激しくなり売買が盛んになると、貨幣が復活します。
領主も貨幣があると便利だと気づき、農民に「地代は貨幣で納めろ」と言うようになります。
すると農民は農産物を自分で都市に運んで(つまり移動自由)売ったり、自分の技術で加工して付加価値を付けて高価に売ったりします。特に後者だと地代は少ない割合になります。
こうして農民は自由になり、実力を蓄え、社会・政治的な意欲も発生します。

人が人を支配する形が、身体支配からだんだん離れていくというのが時代の流れですね。
基本的人権思想も、発端は「国家から逮捕されない自由」「人身の自由」でした。

*「黒死病」「流行」

感染症のため多数の農民が亡くなったので、領主が農民を大事にし始めたというのもあります。

この1346~53年にヨーロッパ全域で黒死病が大流行し、死者は少なくとも7500万人(最大想定2億人)に達しヨーロッパ人口の3分の1以上が失われました。
流行前に不足気味だった食料が、流行後には安価で手に入るようになり生き残った農民を安心にしたということです。

世界の歴史上、感染症での死者は、戦争による死者を大きく上回っています。
戦争では、第二次世界大戦で5000万人死亡、第一次世界大戦で900万人死亡というのがあります。
それに対し感染症では、この黒死病のほか、天然痘で合計3億人死亡、スペイン風邪(インフルエンザ)で5000万人死亡というのもあり、日本では第二次世界大戦前は結核が国民病(亡国病と呼ばれた)でした。

日本の歴史を変えた病気としては、奈良時代の藤四子政権崩壊による政治混迷、平安時代藤原道隆・道兼の相次ぐ死と道長以後の摂関政治確立、江戸時代の紀州藩主兄弟の相次ぐ死による8代将軍吉宗登場というのが、印象深いです。

*「向上」

農民生活が向上、つまり奴隷でなくなり少なくとも人身が自由になるということです。

 

第2・3段落(農民の成長)

イギリス フランス 農奴 束縛 自営
制 一揆
乱 ワット=タイラー

農奴が束縛から解放され、自営化した。領主に対し一揆や乱をおこす農民もいた」

農奴を解放するかどうかは領主の一時的な気まぐれによることが多く、解放したが思い直して農奴に戻すというのも多かったので農民が反発したわけです。
以前の農民なら反発する意欲も力もなかったのですが、この頃の農民は意欲に燃え実力を蓄えていました。

*「農奴」「束縛」

「奴」隷とか、束縛とか、人の身体を無理やり拘束するような語ばかりだったのが、解放されます。

ただ確かに身体への物理的な束縛はなくなっていきますが、精神的な束縛(この会社で働かないと食っていけない、ブラックでも従わざるを得ない)は現代もなお続いていますね。
近現代の資本主義は、そういう労働者の弱みに付け込んでいるといってもいいです。
労働環境を改善すれば労働意欲が向上し利益が上がるはずなのですが、環境改善には費用がかかるのでその出費を惜しんでいるのです。

*「自営」

農民の農地経営の歴史上、重要な言葉です。

農民自身が耕作し、その利益も全部受け取る(農地を所有している)、これが自営農民です。
農民自身が耕作するけど、その利益の何%か(多くは半分以上)を他人に支払う必要がある(農地の所有権はその他人=地主=が持っている。農民は農地を借りている)のが、小作農民です。
地主が農民にタダ働きさせているときは、その農民は農奴であり、地主は領主です。
農民が物として売り買いされているときは、奴隷です。

なお国家や教会への納税は、別にあります。
自営農民は、国家への納税と教会税だけです。
中世農奴の場合は、領主に半分以上持っていかれ、タダ働きさせられ、教会に10%を持っていかれ、さらに国王や領主から兵士として挑発されてと散々です。

小作農民も、地主に払う分と国家に納税する分が二重にあるので、生活が苦しいです。
(現代の賃貸住宅暮らしも同様ですね。ただ一戸建て住宅暮らしも固定資産税というのがあって・・・(笑))

*「一揆「乱」

同じように書いていますが、少し意味が違います。
一揆は地代や税の額を下げてくれという経済的要求で、乱は政治の変革を目指すものです。乱が成功すると、クーデター(政権交代)になったり革命(国家体制変革)になったりします。

ただ最初は一揆や抗議活動だったのが、発展して乱になるというのも多かったのです。
ワット=タイラーの乱も、最初は「その税金おかしいよ?」という抗議が暴動にエスカレートしやがて官庁を襲ったという状況です。

こういうふうにデモや抗議が暴徒化して反乱や革命に発展するというのはよくあることなので、政府はデモや政府批判意見への規制を特に強く考えます。
現在ロシアや中国の政府が国民による政府批判を一切禁じているのが、典型例です。

(イギリスのバッキンガム宮殿の衛兵)

第4段落(国王が時代の主人公に)

市民 中央集権 政治 権力
国王 諸侯
騎士

「都市民は中央集権的な政治権力を望み、国王を支持した。諸侯や騎士は、国王の官僚になった」

*「市民」

市民というのは、都市の住民です。何の仕事をしている人たちでしょうか?
農業は、村の農民がやっています。
つまり都市民は、商業や手工業をやっています。

十字軍などで商業・貿易が盛んになり、貨幣も復活しました。
しかし商人も手工業者も、さらなる利益を求めます。できれば安定した収入が欲しい。

国内にさまざまな領主の領地があると、領地を通るたびに通行税を払わされたり、領主によっては立入禁止のところもあります。
諸侯同士の戦争も絶えないので、交通が阻害されます。
安定した貿易交易のためには、国内統一や戦争のない状態が欠かせません。それをやってくれそうな政治権力者が誰かいないだろうか?

*「中央」

出ました。思考が広がる言葉の典型例です。
中央の対照語は、周辺・地方ですね。

諸侯の領地が国内にいっぱいという状態は、つまり各地方分立状態です。
中央とは、具体的には伝統権威者が存在する都市、つまり首都です。

中世ヨーロッパ各国が領主たちの分立状態といっても、伝統的な権威者は存在していました。
神聖ローマ皇帝を代々受け継ぐドイツ国王や、フランク王国の系譜を継承するフランス国王、征服者の軍事力を受け継ぐイングランド国王らです。
これらの者がリアルの実力をつけてくれれば、都市民にとっては鬼に金棒です。

*「国王」「諸侯」「騎士」

ただ力関係は、各国で違いがありました。

イングランドやフランスは国王がしだいに力を強め、諸侯を圧倒していきます。
しかしドイツでは諸侯の力が強すぎて、とうとう国王じたいがいなくなります。

この状況は、日本の戦国大名に似ています。
大名の力が強いところでは国内の有力武将たちを家臣化し、成長します。
家臣化するときに使った方法が、武将本人を大名の城下町に住まわせ、領地から引き離すものでした。
これは、のちの江戸幕府による諸大名の参勤交代と同じ目的です。幕府は大名を完全に家臣化せず、1年交替で領地に帰れるようにしました。妻子は江戸に定住させ人質にしましたが。
明治政府が初期に廃藩置県をやったときに、諸大名(知藩事)を東京に集めて皇室を守る義務のある貴族(華族)にしたというのも似てますね。

(フランス国王の宮殿の庭)

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感想(3件)

(コナン君が持っている謎の仮面。さあ何でしょう?)